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2005/07/05-00:00
こんにちは。早川忠孝です。当ホームページに掲載されている、郵政民営化についての私の考えについて、読者の方からいくつかご指摘を受けました。すでに読者の方には回答を差し上げておりますが、このホームページ上においても、改めて私の見解を申し上げ、補足とさせて頂ければと思います。
1.「郵便事業の赤字を郵便貯金事業の黒字で補っていた、というのは事実誤認ではないか?」という指摘について。
郵政三事業は一体的に経営されており、郵便事業の赤字が直ちに表面化することはありませんでしたが、郵政公社発足時の(計算上の)郵便事業の累積赤字が約8500億円に上っていたことが明らかとなっております。
郵政事業全体では黒字となっているのは、郵便の赤字を郵貯の黒字で補ってきたからだというのが、一般的な説明です。
なお、日刊工業所新聞社「ジャパンポスト・郵政民営化40万組織の攻防」(著者八木澤徹)には、「当初、379億円の赤字が見込まれていた郵便事業の2002年度決算が合理化で何とか225億円の赤字に圧縮したことを当時の片山虎之助総務大臣が評価した」という記述や、「郵政公社の生田総裁が「郵便を取り巻く経営環境は予想以上に厳しい。赤字を黒字にするのは至難のワザだと眉をしかめた」という記事が掲載されております。
平成6年11月9日の有識者会議において、竹中平蔵郵政改革担当大臣から「郵政事業の債務超過(15年末約5500億円)の解消等を是非お願いしたい」との発言がなされております。。
2.「簡易保険の保険金がいずれ支払われなくなるおそれがある、というのは事実誤認ではないか?」という指摘について。
簡易保険事業については、現在のままでは商品の優位性が乏しいと言われており、徐々に採算が悪化しているようです。年々保険料収入が減少し、他方で保険金の支払いが増えていけばやがて保険金の支払源資が不足することになります。まして保険資産の運用成績が悪ければますますその危険性が増します。
平成15年度の郵政公社の決算では、保険料収入が12兆2916億円に対し、保険金等支払金が15兆8677億円という数字がでております。保険料の収入が支払額よりも大きい理由はわかりませんが、既存の保険料の積立金の運用成績が芳しくないとすれば、抜本的改革をしないと保険が成り立たなくなります。
なお、簡易保険の勧誘をされている現場では、成績を上げるために一般の民間の生命保険には入れない人まで加入させているところがあるのではないかという指摘もあります。保険のリスク計算のうえで、民間生命保険と比較してシビアさを欠いているのであれば、問題は深刻です。以上、私個人の将来予測もいくぶん含まれていることについてはご了承いただきたいと思います。
現在の公社のままではいずれ三事業とも赤字になってしまう恐れがあるというのが、去る6月21日の郵政民営化特別委員会における私の質問に対する郵政公社生田総裁の答弁です。
3.「国民の財産として守るべきなのは『郵便ネットワーク』ではなく、『郵便局ネットワーク』ではないか?」という用語の指摘について。
確かに「郵便ネットワーク」が国民の財産である、と申し上げましたが、正しくは「郵便局システムネットワーク」と表現することが良かったかもしれません。「郵便局ネットワーク」としなかったのは、建物としての局舎の存在には固執すべきではないと思ったからです。「郵便局システムネットワーク」を今後も維持し、発展させていくことが求められております。
私は、郵政の民営化を新たな飛躍に向けた跳躍台とし、時代の変化に柔軟に対処して、郵便局はこれまでの郵便業務にあわせて、単なる郵便貯金や簡易保険だけではなく、一般の銀行代理店業務や保険代理店業務を行い、あわせて行政窓口サービス等新たなサービスを提供する地域総合サービスセンターに成長していくのが良いと考えております。
4.その他
私が郵政改革を考えるうえでもっとも重要でかつ深刻な問題と思っておりますのは、郵政公社の収益の源となっている特殊法人への財政投融資や国債、地方債の引き受け等による郵便貯金等の資金運用の途がいずれは極端に狭くなってしまうのではないか、ということです。
すなわち、国債発行残高の急激な膨張によって、国債の発行及び管理に関する財務当局の政策変更が必至であり、これによって郵政公社の国債引受けのありようが大きく左右されます。また、特殊法人の整理・統合にあわせてこれらの特殊法人が行ってきた事業が大幅に縮小あるいは廃止されることも予想されます。こういった情勢の変化を予想すると、郵政公社が金融部門においてこれまでのように安定した資産の運用ができ、収益を確保することということが極めて困難になる、ということです。
私は今まさに行われようとしている郵政改革は、郵政事業に従事されている方々にとっても避けられない喫緊の課題だと思っております。改革は改革を担う者が自ら主体的に行なわなければ十分その成果を挙げることは期待できません。現在郵政事業に関わっておられる郵政職員の皆様の奮起を心より期待しております。