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道州制に関する第3次中間報告(案)
 
道州制推進本部
平成20年7月4日
前文
 

 わが党では平成16年11月の道州制調査会発足以来新しい「国のかたち」の創造を念頭に、精力的に道州制に関する議論を進めてきた。
 平成17年7月には第1次中間報告を取りまとめ、道州制をめぐる主な論点整理等を行い、平成19年6月には第2次中間報告を取りまとめ、「道州制への移行を断行することによって、これまでの中央集権体制を一新し、地方分権体制への大規模な転換を行うこと」を提言した。
 さらに、平成19年11月からは総裁直属の道州制推進本部として審議を開始し、第2次中間報告で「残された課題・さらに検討を深める課題」とされた事項を中心に検討を深めてきた。
 道州制推進本部での議論の過程では、第3次中間報告に向けた「たたき台」を元に総会、役員会、5つの委員会で議論、わが党所属の全国会議員へのアンケートを踏まえて「素案」を作成し、全都道府県議会議長、全都道府県知事との意見交換を実施するなど、幅広い意見の集約を行ってきた。
 以下に、これまでの審議で整理してきた導入すべき道州制の姿について示す。分権型国家の実現に向け、平成27年(2015年)から平成29年(2017年)を目途に道州制の導入を目指すべきである。

 
1 道州制導入の理念・目的
 戦後の荒廃した国土、産業基盤の崩壊という状況の中から、わが国はいち早く食料の自給を達成し、世界が瞠目する復興をなしとげ、さらに持続的な高度成長の上昇気流に乗り、世界第二位の経済大国・日本を作り上げてきた。その背景には産業分野における技術革新、ものつくりの伝統の復活、教育の成果、さらには勤勉な国民性など、いくつかの要因があるが、何といっても高潔で士気の高い官僚に支えられてきた統治機構があったと言える。
 しかし、今やわが日本の官僚主導の統治機構は、国民のニーズに対応することができず、機動性・柔軟性を欠き、硬直化し、随所に金属疲労を露呈している。  今やわが国は、有史以来初めて人口減少社会を経験しており、未知の世界に飛び込もうとしている。急速に高齢化し、人口が減少する社会を迎えて、我々は、これまでの硬直した財政運営を克服し、ダイナミズムある新しい国の統治機構を構築しなければ、存立していくことが出来なくなってさえいる。
 21世紀に羽ばたこうとする日本は、官僚統治による中央集権政治から脱却し、国民の総意と努力による、安全、安心で、公平な国づくり、地域づくりを推進しなければならない。
 そして、わが国の存続と発展のためには、抜本的に国のあり方を見直し、中央政府及び地方政府のそれぞれの責任を明確化するとともに、地域の経済力の強化を図ることが必要である。
 これを実行しなければ、EUや中国・韓国・シンガポールなど他の東アジア諸国が台頭する中で、国際競争を勝ち抜けないし、また、国民が真に必要とするサービスを適正なコストで提供できなくなる。 特に、少子高齢化が進展する中、持続的・安定的な社会保障制度を確立するためにも新しい統治機構を作り上げることが重要である。
 今、政治家に求められているのは、新しい国家・日本をつくるというプリンシプル・大胆な方針を確立することである。
 そのための道州制である。日本の再生のための道州制である。
 
道州制で達成すべき目的は次のとおりである。
1  中央集権体制を一新し、基礎自治体中心の地方分権体制へ移行
2  国家戦略、危機管理に強い中央政府と、広域化する行政課題にも的確に対応し国際競争力を持つ地域経営主体として自立した道州政府を創出
3  国・地方の政府の徹底的な効率化
4  東京一極集中を是正し、地方に多様で活力ある経済圏を創出
 
2 道州制導入のメリット・デメリット
 
このような道州制を導入することにより、次のようなメリットが生じる。
1  施設の効率的配置、広域的有効利用が可能となり、インフラ整備・サービス供給でスケールメリットが生じる
2  経済効果と費用負担との関係が区域内で完結する程度が高まる
3  道州は海外諸国と直接経済交流・競争できる規模になる
4 地域資源の活用と地域資産(観光など)の興隆により、東京以外にも成長の核になる都市が育つ
5 地場産業・中小企業の基盤強化などにより、地域間の経済力格差を現在より縮小できる
6 道州政府による多様な政策の提示、相互間の競争により国全体が多様化・活性化する 
7 ブロックレベルで決める方が良い問題はブロックの住民が民主的・効率的に決定できる
8 中央政府は身軽になり国家戦略・危機管理能力が高まる
9 国・地方の政府の組織・人員を全体としてスリム化、効率配置できる
10 基礎自治体中心の行政体制に変わることにより、責任が明確化され、地域の実情や多様な住民ニーズに応じた行政サービスが迅速、かつ、よりきめ細やかに提供できるようになる
11 その他、例えば以下のような行政分野の充実が図られることが期待される。
・消防
・防災の強化
・地域治安の向上
・独自の人材育成、より充実した教育、少子高齢化対策、子育て支援
・地域医療、介護の充実
・リサイクル社会の確実な推進
 
デメリットとして懸念される事項には、必要な対策を講じる。
1  道州政府は住民から遠くなる
→基礎自治体中心の住民サービス体制構築により、住民ニーズに的確に対応
2 小規模な基礎自治体への補完機能が弱まるおそれ
→基礎自治体の自立と相互間の連携により、小規模自治体の行政をサポート
3 道州制で一極集中、地域間格差が生じるおそれ
→道州内の機能分担、地域間バランスを考慮して、州都のあり方等を検討
4 国家としての統一性が失われ、国家の力が弱まるおそれ
→道州制はむしろ国の役割の重点化により、国家の戦略的機能を強化するもの
5 各都道府県が持つ文化、伝統、郷土意識、一体感が失われるおそれ
→地域の文化、伝統、郷土意識、一体感の維持・向上のための施策を道州が実施することや都道府県であった区域に一定の位置づけを与えることなどにより積極的に対応
6 専ら各都道府県の区域をマーケットとする企業活動が縮小するおそれ
→むしろマーケットの拡大として捉え、地域経済を活性化
 
3 導入すべき道州制の骨格
   
 道州制推進本部としては、道州制を「都道府県に代えてより広い区域を有する自 治体として道・州を設け、基礎自治体優先で基礎自治体と道州に対して権限・財源・人間をパッケージで移すことにより、わが国の統治構造を抜本的に変える改革」として構想する。
 その際、連邦制に限りなく近い道州制の導入を目指す。
 
具体的には、
1  都道府県を廃止し、これに代えて全国に10程度の道・州を設置する。
2 道州は自治体とする。すなわち、選挙により選出される議会と首長を有し自治権を有する団体とする。
3 権限・財源・人間は極力基礎自治体優先で再配分を行い、中央政府、道州政府は「小さな政府」を志向する。現在の都道府県の仕事は、原則として基礎自治体に移管し、国の仕事は国が本来果たすべき役割に属するものを除き、できる限り道州に移管する。すなわち、基礎自治体との関係では、道州は基本的に基礎自治体では行い難い広域性のある政策・事業のみを実施するものとし、むしろ中央政府から移される仕事が道州の仕事の中心を占める。
 
4 「第2次中間報告」で残された検討課題についての考え方
 
(1) 道州の区割りのあり方・道州の州都のあり方
 
区割り、州都の具体論については、国と道州の役割分担、基礎自治体のあり方、
国と道州の組織などの他の課題について議論が尽くされた後に終局的問題として議論すべきという考え方もあるが、国民的な議論を喚起する観点からは道州制推進本部としての考え方を示すことが望ましいと考える。
 
区割りを議論する際には以下の点を総合的に考慮すべきである。
1  インフラ整備・サービス供給でスケールメリットが生じる規模を確保。
2 海外諸国と直接経済交流・競争できる規模を確保。
3 地域間の経済力格差を現在よりも縮小する規模を確保。
4 地域の文化、伝統、郷土意識、一体感の維持・向上。
 
州都についての選択肢は次のとおりと考えられる。また、州都について意見を具申する機関を国に設けるといった考え方もある。
1  各道州のアイデンティティとの関連や区域内の交通の利便性、東京以外の成長の核になる都市をつくるといった観点からは、従来からのブロックの中枢都市におくこと
2 各道州内での一極集中の回避、リスク回避のために政治・行政と経済の中心を分けるといった観点からその他の都市あるいは中小都市におくこと。
 
(2) 道州制下における大都市制度、東京のあり方
 
道州制下における大都市制度、東京のあり方については、1 多極分散型の国土形成を図るという国土政策的見地と2 広域自治体(道州)との関係や組織・権限等に関する特例の必要性という地方自治制度の見地からの検討が必要である。
1  国土政策的見地からは、道州制導入の目的のひとつでもある東京一極集中の是正が何よりも重要である。東京には現在、政治、経済、文化等あらゆる機能が集中しているが、まずは道州制の導入によって国(中央省庁)に集中している権限・財源を各道州に大胆に移譲し、政治・行政の権能を大幅に分権化することにより、経済、文化等の分散化につなげていくことが有効である。
あわせて、各道州に高度な都市機能を備え成長の核となる中枢都市を形成し、東京への流出を食い止め、後背地を含めた圏域全体を牽引することにより各地方ブロックに多様で活力のある自立的な経済圏を創出することが可能になると考えられる。
2 現在地方自治制度における大都市等に関する特例としては、東京に都区制度、その他の大都市等に政令指定都市制度、中核市制度、特例市制度が適用されている。現在はもっぱら事務配分の特例を中心としているが、道州制導入に当たって現在の都道府県の事務を原則として基礎自治体に移譲するとした場合には、事務配分における特例の必要性は弱まると考えられる。基礎自治体は基本的に権限・機能において差をつけず一律にすべきと考える。
なお、政令指定都市のあり方については、引き続き検討していく必要がある。
3 現行制度をさらに進めて、大都市については道州から独立した大都市州としての位置づけを認めるという考え方もあるが、大都市を除いた地域のみで構成される道州の規模・能力が大幅に低下することとなることから望ましくないものと考えられる。
4 しかしながら、東京(現在特別区の存する区域あるいは都心3区(千代田区、中央区、港区))については外交や迎賓、皇室関係の事務等の首都としての機能が存在し、人口や社会経済機能の集積が他の大都市と比較しても著しいこと等から特別な配慮が必要とも考えられる。自治体を置かず、国直轄の区域とするという考え方は、地方自治の根幹に関わる問題であり適当ではないと考えるが、他の大都市地域を相当上回る規模の人口の高度な集積に着目し、道州との調整、事務配分、税財政、道州の区域等に関する特例を設けることが適当と考える。
 
(3) 道州と国の役割分担・道州に対する国の関与のあり方・道州制下における中央省庁体制のあり方
 
道州と国の役割分担については、第2次中間報告において基本方針、3原則を明確に示すとともに、乗り越えるべき課題を整理した。当報告においては以下に乗り越えるべき課題についての解決の方向性を示す。
 
中央省庁の再編については、国の役割の重点化により大幅なスリム化が当然の前提となるが、現在の組織を念頭に置いて省庁、局、課室の数を減少させることのみに重きをおくのではなく、国家戦略に関わり必要な機能を洗い出し、この機能を充分に発揮しうる組織のあり方をゼロベースから構築して抜本的な再編を行うべきである。
 
国と地方の役割分担を明確にし、地方が自主的主体的に地域の課題に対応できるよう、国が道州及び基礎自治体の担う事務に関し法律を定める場合には大枠的かつ最小限の内容に限ることとし、具体的な事項についてはできる限り道州及び基礎自治体の自治立法に委ねる。また、国の地方に対する関与も必要最小限度とし、法律の根拠を要することとする。
 
公共投資については、人口減少、都市化と過疎化の同時進行、財政制約、環境配慮などの状況下において、地域の自立・活性化、国際物流ネットワークの構築等によるわが国の成長力強化、防災・減災等による安全・安心の確保等を推進するため、真に必要な公共投資を選別する必要がある。例えば、都市機能が集積している都市と周辺市町村の連携・ネットワークを促進していくことも必要である。このため、整備水準や施設の利用状況等を踏まえた事業のメリハリ付けを行い、更なる重点化・効率化を図る。その上で、国は国家規模でネットワーク形成を図る必要がある事務を重点的に担うこととする。その際、国から道州・基礎自治体への事務・権限移譲に伴って、公共施設の整備水準・管理水準が低下しないよう十分な地方財源の確保も必要である。
また、高度経済成長期を通じて整備されてきた社会資本のストックについても、建設後の年数が経過するにしたがって、今後、老朽化したストックが急速に増加していくという課題が顕在化しており、維持管理の重要性が益々高まっている。このため、既存施設の改善という視点から質的向上を図るために行う改良再生、定期的な点検等に基づいて、損傷が軽微な段階から対策を行う予防保全の考え方に立った計画的・効率的な維持管理や更新を、今まで以上に重視する必要がある。
 
(4) 道州における公務員制度のあり方〔含官民交流〕
 
国地方を問わず公務員は特定の利害、組織にとらわれることなく、国民と国家の繁栄のために、高い気概、使命感及び倫理観を持った、国民から信頼される人物である必要がある。国、道州、基礎自治体に勤務するすべての職員の総称は「日本国公務員(仮称)」と統一する。更に、公務員には、幅広い知識・経験に裏打ちされた一層の企画立案能力、管理能力が求められる。また、精緻・複雑化する行政分野に対応した今以上の深い専門的知識・経験を有するスペシャリストとしての能力も必要である。
これらの観点を踏まえると、省庁職員については採用から退職までを一元的に管理する仕組みの創設を含め人事管理のあり方の抜本的な見直しが必要となると考えられる。
 
道州制導入を円滑に進めるためには、都道府県から基礎自治体、国から道州への大幅な事務移譲に伴い、当該事務に従事する公務員の大規模な移管も必要である。国から道州や基礎自治体への公務員の移管は、国の有する高度な技術力を道州や基礎自治体に継承するという観点からも有効である。
この場合、受け入れる側の道州・基礎自治体において、能力・実績に基づいた任用を行うことを基本とし、省庁に残る公務員については、上記の新たな人事管理の仕組みに基づいて配置転換や民間への移行、退職不補充などにより総数を大幅に抑制する。また、移管する公務員にかかる退職金を含めた人件費のための財源を適切に道州や基礎自治体に措置することも必要となる。
その際、一定の移行期間を設け、可能な限り省庁職員の意向を踏まえた身分移管、円滑な事務引継に配慮することも必要である。
 
省庁職員の総数の大幅な抑制とあわせ、道州・基礎自治体においても重複事務の排除、同種の業務をまとめて効率的に行うことにより、国・地方を通じた公務員数は全体として大幅に削減することが可能となる。個別分野の国・地方の役割分担の具体化、道州及び基礎自治体の総数などを踏まえ、中長期的に総定員数を管理する計画を策定することも考えられる。
 
(5) 道州の議会及び首長のあり方・道州と国会のあり方
 
道州議会のあり方については、1 民主制確保のための選挙制度のあり方、2 首長との関係(議院内閣制か、二元代表制か)、3 定数、 4 法律で一律に規定すべきか、道州の選択の余地を認めるかが論点となる。
1  特に道州議会の選挙制度はきわめて政治的な問題であり、以下の点について政治の場での検討を進めることが不可欠である。
・道州の区域を分けて一定の選挙区を設け地域代表としての性格を重視するか、全域の代表として選出することを重視するか。
・現行の都道府県と同様に中選挙区制を基本とするか、小選挙区制を入れるか、比例代表制を基本とするか、併用するか。
・道州議会の選挙制度と衆・参両院の選挙制度との関係をどう考えるか。道州議員には、地域代表としての役割も期待されることから、全道州を選挙区とするのは適当ではなく、現行の都道府県の区域以下とすることが適当である。その際、小選挙区制とするのか、中選挙区制とするのかという議論も必要であり、小選挙区制を採用する場合は、30万人程度の基礎自治体を想定すると、基礎自治体の区域を更に区分するものとなる。
2 道州の首長は、現行憲法下では、住民の直接選挙で選出されることになる。その際、道州の首長は強大な権限を有することから、多選制限をすることが必要である。
一方、道州議会との安定した関係を保つとともに、道州議会の活性化を図るため、憲法改正を視野に入れて、議院内閣制を採用すべきであるという見解もある。
3 道州議会議員の定数については、議会審議の効率化や合理化の観点から、現行の都道府県議会議員の数の割合を勘案しつつ、検討する。
4 州議会のあり方については、民主主義の根幹に関わることから、上記の論点に関わる基本的事項については法律で規定することが必要である。その上で、制度の選択肢を可能な限り道州に認めることが適当である。
5 国の役割の重点化に伴い、国会議員の数は大幅に削減、参議院を各道州同数の代表者から構成することとするなど国会及び国会議員のあり方を抜本的に見直す。
 
(6) 道州の自治立法(道州法)のあり方
 
限りなく連邦制に近い道州制を目指す観点から、国が道州及び基礎自治体の担う事務や組織に関し法律を定める場合には大枠的かつ最小限の内容に限ることとし、具体的な事項についてはできる限り道州法又は基礎自治体の自治立法に委ねる。
すなわち、国権の最高機関である国会の意思を拘束できるのは国会自らのみであることから、国会が自己抑制的に自らの立法分野を限定する必要がある。
その際、道州及び基礎自治体の事務や組織に関し法律を定めることができるのは、国民の生命、身体等への重大な危険から国民を保護するための事務や民主政治、地方自治、私有財産制度の根幹となる制度に関わる事務、国家の安全保障や国際的要請に係る事務などに関し全国的に統一的な定めが必要となる場合に限ることとする。
また、国が、道州及び基礎自治体の担う事務や組織に関し法律に規定する場合においても、できる限り道州法で変更(いわゆる「上書き」)できることとする。
これらの考え方に基づいて、現在地方をしばっている法令はすべてゼロベースで見直す必要がある。
あわせて、道州又は基礎自治体の事務とされた事項に関し、国がいかなる関与ができるかについては、分野ごとに更に議論を深める必要がある。
 
道州と基礎自治体は対等・協力の関係にあることを前提に、道州法で基礎自治体の事務や組織に関して規定することは認めないことが適当ではないか。一方で、基礎自治体の事務や組織に関する事項を含め、地方に関することは道州に委ねるべきであるという考え方もある。
 
(7) 道州制下の基礎自治体の規模等
 
道州制の導入に併せて、住民に身近な事務が住民に最も身近なところで決定される基礎自治体中心の体制を確保するため、現在都道府県が行っている仕事の大部分を基礎自治体に移譲する。これに伴い、基礎自治体の事務・権限は基本的に一律となり、中核市・特例市の制度は廃止されることとなる。なお、政令指定都市のあり方については、引き続き検討していく必要がある。
 
基礎自治体は移譲される事務・権限を適切に担いうる規模・能力を備えることが必要であり、現在の中核市程度の人口規模(人口30万以上)あるいは少なくとも人口10万以上の規模が望まれる。
もっとも、人口規模が10万には満たないが、移譲される事務・権限を適切に担う能力を備えていると認められる自治体については、都道府県の事務・権限を移譲する。
市町村には一層の行政体制の充実強化に向けた取り組みが求められる結果、おおむね700から1000程度の基礎自治体に再編される。
その際、住民自治の観点から、地域自治組織や地域コミュニティの充実など、さらなる自治体内分権の仕組みを設けるべきである。
 
地理的な制約等から、移譲される事務・権限を適切に担いうる規模・能力を有することとならない小規模団体については、道州あるいは近隣の基礎自治体が補完する必要がある。
道州が補完することについては、住民からの距離が遠くなること、当該基礎自治体の事務を処理するための体制を新たに整備する必要が出てくること等が懸念されることから、基本的には近隣の基礎自治体が補完することが適当であると考える。この場合、小規模団体は近隣の基礎自治体の内部団体に移行し、限定された事務のみを処理する簡素な団体となる仕組みや近隣の基礎自治体が事務を受託する手法などについて検討すべきである。
 
また、単独では人口規模の要件を満たさない基礎自治体が複数で広域事務組合を構成する場合、経過措置的に当該組合に対して事務・権限を移譲することも考えられる。
 
以上の考え方とは別に、道州ごとに市町村の状況、地理的・地形的な条件、歴史的文化的経緯等が異なっていることから、道州内の市町村の権限、規模・能力、市町村再編の必要性、小規模団体の補完のあり方などについては、国が一律に考えるのではなく、各道州に任せるという考え方もあるが、今後、十分な議論が必要である。
 
(8) 道州の税財政制度
 
道州制の狙いは、1 行政を効率化するとともに、2 「陳情行政」から脱却し、地域住民が自らの意志と力で素晴らしい地域を創っていくことである。したがって道州の税財政制度の最終的な姿は、次の考え方に立って制度設計すべきである。
1  中央政府への依存から脱却し、道州の税財政需要全てを自らの税収で賄う。
2 課税ベースは、国、道州、基礎自治体間で原則共有しない。
3 自己責任を徹底するため、道州・基礎自治体の税については、課税権・徴収権を自らが行使する。
その際、道州・基礎自治体の課税ベースについては、「自主的な財政力」という原則に基づき、1 課税自主権が発揮でき(自己決定型)、2 受益と負担の関係が明確なもの(域内定着型)とすることが適当である。なお、国においては、国際標準や納税者利便の観点から、道州の領域を超え全国一律の仕組みが求められる税制を考えなければならない。
 
上記の最終的な目標を実現するためには、まず、各道州の税収基盤となる経済力を高めるための知的・社会的インフラ整備が重要である。
更に、道州が社会基盤の拡充と新産業の樹立を図り、安定的な経済・産業基盤が確立し、財政的に自立できるまでの間は税源偏在を調整する必要がある。この場合、「陳情行政」からの脱却が要請される一方、地方自治体の当事者間での調整には限界があり、強者と弱者を固定化してしまう懸念もある。このため、既存の補助金・交付税を廃止する一方、第三者的立場として、また、社会保障(年金を除く)、義務教育、警察・消防について最低限全国一律に義務づけられる事務の適正な執行を確保する観点に立って、現在の地方負担分を含め全額国が負担する新しい交付金(シビルミニマム交付金)を創設し必要な財源保障・財政調整を国の役割において行うこととすべきである。
 
今後、国、道州、基礎自治体の役割分担のより具体的な制度設計を進めつつ、これに対応して、上述の考え方に沿って、それぞれに割り当てられる税源のあり方や、財源保障・財政調整の仕組み、課税自主権の拡充方策等について、さらに検討を深めていく必要がある。
あわせて、現在の国と地方の債務の処理の道筋をつける。
 
(9) 道州制導入のプロセス(道州制基本法、道州制特区法を含む)
 
今後道州制を強力に推進していくためには、国民的議論を喚起し、道州制の導入について国民的な合意を得ていくとともに、道州制の基本的な理念・目的、制度設計の基本的な方針、導入のための検討機関、タイムスケジュールなどについて規定した基本法の制定が不可欠である。
このため、当報告により、国民に道州制推進本部の道州制についての考え方を投げかけ、世論との活発なキャッチボールを行うとともに、民間有識者や経済界等と連携し、客観的かつ具体的な経済効果と行革効果を示すよう検討を深め、さらに明確なビジョンを策定し基本法の制定につなげていく。
 
道州制特区制度を活用した北海道の取組を先駆的事例として、世論を喚起し、全国的な道州制の早期実現に向けた推進力とする。
このような観点から、北海道には、道民による自主的・自立的な検討を踏まえて、権限、税財源の移譲をはじめ、広域行政の推進を図るための幅広い提案を更に積極的に行うことを期待する。この提案を受けて、北海道に対する幅広い権限の移譲等を可能な限り推し進める。これらの動きに対して、党として積極的に支援する。
また、数多くの提案や権限移譲、その執行を積み重ねながら、年度ごと、あるいは計画満了時に、真の地方分権の推進の観点、すなわち、1 地域の自主性、自立性が向上しているか、2 国・道を通じた行政のスリム化・効率化に繋がっているか、3 地域の自立的な発展に寄与しているか、などの観点からその成果を検証・評価することを通じて、最終的に道州制の真のビジョンへの収斂を図る。
これと平行して、北海道には、支庁改革や道内分権、市町村合併などの環境整備にも取り組みつつ、移譲された事務・事業を活用して、地域の発展に繋がる施策を総合的かつ効果的に推進することを期待する。
 
さらに、九州や関西などにおける取組を党としてもバックアップし、各地域で積極的な取組が行われることを推進する。
 
当本部では、このような取組を進めるとともに、さらに議論を深め、道州制の実現を強力に推進する。
 
 
 
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