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韓国・李明博新大統領就任挨拶
尊敬する国民の皆様。 700万の海外同胞の皆様。
ご列席賜りました盧武鉉前大統領、金大中、金泳三、全斗煥元大統領、イスラム・カリモフ・ウズベキスタン共和国大統領、ナムバリーン・エンフバヤル・モンゴル国大統領、サムダッチ・フンセン・カンボジア王国首相、日本の福田康夫総理大臣、ヴィクトル・ズフコフ・ロシア連邦首相、ユスフ・カラ・インドネシア副大統領をはじめとする各国の祝賀大使とご来賓の皆様。
ご出席いただきありがとうございます。
本日、私は、国民の皆様の指名を受け、 大韓民国の第17大統領に就任いたします。
限りなく誇り高き国、限りなく偉大なる国民の前に 厳粛な気持ちで敬意を表し、私に与えられました歴史、 時代の使命を果たすために渾身の努力を尽くすことを固く誓います。
私はここで、国民の皆様にお約束いたします。 国民に仕え、平和な国を作り上げます。 経済を発展させ、社会を統合いたします。 文化を育み、科学技術を発展させます。 安保を強固なものにし、平和統一の基盤を固めます。 国際社会における責任を果たし、人類の共同繁栄に貢献いたします。
今年、大韓民国は建国60周年を迎えます。 我々は、失った地を取り戻して国を建て、その国を守るため命をかけました。 みな共に、一生懸命生きて参りました。
そうして、世界市場最短の期間に産業化と民主化という偉業を同時に達成いたしました。 ひとえに、我々の意志と我々の力によるものであります。
地球上で最も貧しかった国が、世界10位圏の経済大国となりました。 支援される国から、支援する国になりました。 今では、先進諸国と肩を並べられるようになりました。
人は、これを「奇跡」と言います。「神話」とも言います。 しかし、我々は知っています。 それは、奇跡ではなく、我々が共に流した血と汗と涙の結晶なのであります。
それは、神話ではなく、我々が生きてきた真の生の物語であります。
独立のために命を捧げた祖先たち、戦線で散って行った将兵たち、強烈な日差し、風雨の中で土地を耕した農民たち、昼夜を問わず、産業の現場を守り抜いた労働者たち、若さを捧げて民主化を果たした青年たちの涙ぐましいほど偉大な物語であります。
タンスの中の金を取り出し、通貨危機を乗り越えようとした市民たち、冬の海で、流出した油を拭き取っているボランティアたち、そして、社会の各領域で任せられた任務を黙々と果たしてきた数多くの市民と公務員たち、この全てが大韓民国の成功神話の主役であります。
今、我々は、こうしたことについて、公に語れるようになりました。 感謝の気持ちで、堂々と語れるようになりました。
この自負心が、未来を開く大韓民国の力です。 私はこれから、皆様と共に自信を持って未来への道を探し、切り開いていこうと思っております。過去の束縛から逃れ、現実の制約をじっくり見据えて、未来の可能性に向け、共に前進していく考えであります。
尊敬する国民の皆様。
私は、大韓民国の大統領として、新たな60年の最初の年であります2008年を、大韓民国の先進化の元年とすることを宣言いたします。
産業化と民主化の実りを大事に育て、各自が自らの役目を果たし、公共の福利のために協力する社会、豊かさと配慮と品格溢れる国づくりに向けた大出発を宣言いたします。
過去10年間、 時には立ち止まったり、挫折もしましたが、成就の喜びはもちろんのこと、失敗のつらさまでも財産として、我々は再びスタートします。
我々は、「イデオロギーの時代」を越え、「実用の時代」を歩まなければなりません。実用の精神は、東西の歴史に共通する合理的な原理であり、グローバル化の波を乗り越えていくうえで有効な実践の知恵であります。
人間と自然、物質と精神、個人と共同体の健康で美しい調和を実現する時代の精神であります。
大韓民国の先進化を果たすうえでは、私とあなた、私たちとあなたたちの区分がありません。協力と調和に向けた実用の精神で階層間の葛藤を解消し、強固な闘争をなくしていく所存であります。
政府が心から国民に仕える国、経済が活気に溢れ、労使が一つとなり、少数と弱者を暖かく配慮する国、立派な人材を育てて世界に送り、世界の人材を呼び入れる国、これが私の描いている大韓民国の姿です。 李明博政権が目指す先進一流国家の夢であります。
奇跡は続きます。神話は続きます。 世界を驚かせた発展のエンジンに再び火をつけ、より強く回していきます。 私がリードし、国民の皆様が一丸となれば、必ずやり遂げることができます。
尊敬する国民の皆様。
この時点で、我々が一緒に誓うべきことがあります。 急変する時代の流れを冷静に認識し、自ら変わらなければならないという覚悟を新たにすることです。
我々が油断している間、世界は我々を追い越して行きます。 後発国もぴったりと追い上げて来ています。 国家競争力は低下し、資源と金融市場の不安が韓国経済を脅かしています。
国内事情も良いとは言えません。 中間所得層は萎縮し、庶民生活は厳しくなっています。 階層間、集団感の関係は今もなお、葛藤と闘争の状態に陥っています。
市民社会は量的には成長しましたが、権利ばかりを主張し、責任意識は高まることがありません。 少子高齢化社会が到来しています。 分断国として、重荷も負わされています。
向う60年の国の運命を左右する岐路で、 この歴史的山場を越えるため、 私は国民の皆様がより積極的に変化してくださることをお願い申し上げます。
変化を怠れば、取り残されてしまいます。変化に逆らえば、振り回されてしまいます。変化の流れに合わせ、変化を作っていかなければなりません。
それが難しく苦痛が伴っても、素早く変化しなければなりません。 不合理な、時代の流れに合わない古きものは、果敢に切り捨てることが必要であります。 その方向は開放と自律、そして創意であります。
尊敬する国民の皆様。
今、経済の立て直しが、何よりも急がれます。新しい成長エンジンを作り上げ、よりダイナミックな成長を果たし、より多くの雇用を創出することが求められます。
まず政府から先に、有能な組織に変える考えであります。「小さな政府、大きな市場」に、効率性を高めて参ります。「より働く政府」を作り上げます。
今後、政府は、うまくやっている所はさらにうまくいくようにし、支援が必要な所には力を貸す役割を果たします。必ずしも政府がやるべきことでなければ、民間に移譲いたします。公共部門にも競争を導入いたします。税金も引き下げなければなりません。そうすることにより、投資が活気を取り戻すことができます。
公務員数を段階的に減らし、不要な規制は早急に取り払います。
国民の皆様は、遠からず、 新政権が効率的に働く姿を目にすることでしょう。
企業は国富の源であり、雇用創出の主役であります。 誰もが簡単に創業し、工場を建てられるようにすることが求められます。
企業家が進んで投資し、元気よく世界市場を駆けめぐるよう 市場と制度的環境を改善いたします。
技術革新を追求する中小企業が、活気を帯びなければなりません。今後、中堅企業に成長し、さらには大企業と協力し、競争もできるよう手助けいたします。
透明かつ公正な経営をする企業家が尊敬され、 投資を行い雇用を作り出す企業が支持されるべきであります。
労使は、企業を動かす両輪です。 どちらか一方がつまずけば、企業が倒れてしまいます。
先進国では労使紛争が著しく減少しています。 「過激な闘争は結局自滅をもたらす」との認識を、 労使双方が共有しているからであります。
労使文化の自主的改善は、先進化の必須条件です。 「闘争の時代」を終え、「パートナーの時代」へと移行しなければなりません。 企業も労組も互いに譲歩し、一歩ずつ歩み寄ることが必要です。
つらい時ほど、企業が力を振り絞らなければなりません。企業の方から先に、 透明かつ公正な経営で、労働者に暖かい手を差し伸べてください。
このような時、労働者よりも一生懸命働かないといけません。 不法闘争は取りやめ、生産性を高めることです。そうして、労使関係が 健康なものとなります。政府も原則と誠意をもって努力いたします。
市場の開放は、もはやさけられない大きな流れとなっています。 輸出産業が経済の大きなウエイトを占める我が国としましては、 自由貿易協定を通じて国富を増大させることが必要であります。
しかし、開放に対応できない部門は、大いに懸念されます。 特に、農民たちがそうです。 だからと言って、ここで諦めるわけにはいきません。
我々、国民皆が、農漁民の子孫です。農業、農村、農民への心配は国の心配であります。その対応策を政府が共に作り上げてまいります。
農林水産業が、これ以上1次産業にとどまってはなりません。 先端の生産技術と結びつけ、流通サービス経営と統合させ、 競争力のある2次、3次産業にグレードアップしなければなりません。
海外市場の開拓も、積極的に行ってまいります。 農漁民と政府が力と知恵を集めれば、 災い転じて福となる、ことも可能と考えます。
尊敬する国民の皆様。
誰もが、人間らしく暮らすことができ、みんなが健康で住み良い社会を目指します。助けが必要な人は、国が世話を致します。
恩恵的、事後的福祉は解決策ではありません。能動的、予防的福祉が求められます。そうして、落ちこぼれのない世の中を作り上げることができます。 必ず必要な人に恩恵が施されるようになります。
女性は市民社会と国の発展において、堂々たる主役であります。 女性の社会参加は、社会を成熟させます。 男女平等政策を推進し、市民権と社会権の拡大に努めてまいります。 より多くの女性が、意思決定の地位に上がれるよう機会を増やし、 関連の制度を改善いたします。
ライフサイクルと生活事情によるニーズに合わせた保育システムを構築する考えであります。政府が子育ての世話をすれば、少子化問題が改善されるだけでなく、 暮らしの質と人的資源のレベルを高めることができます。
若年層の苦痛にも関心を傾ける考えであります。 国の内外により多くの雇用を創出し、若者たちの社会進出を支援いたします。 住居問題を安定させることにより、個人の生活はもちろんのこと、 社会の安定基盤を確保してまいります。
高齢化時代を迎え、高齢者福祉対策も急がれます。 高齢年金を適正化し、公共福祉を改善いたします。 高齢者のための医療サービスと施設を増やし、 働く意欲のある高齢者の雇用創出にも取り組む所存であります。
障害者にも、暖かい配慮とより多くの機会を与えたいと考えます。 働ける人にとっては、仕事が最高の福祉であります。 それができない人たちは、国が責任を持って世話をいたします。
尊敬する国民の皆様。
先進化は我々自らのために、我々みんなが遂げるべきことであります。 大韓民国の先進化は、いかに立派な人材を、 いかに多く育てるかにかかっています。
青少年は大韓民国の未来を担う夢と活力の発電機です。 青少年の適正と潜在力を開発してデジタル、グローバルなパワーの強化に 積極的に取り組んでまいります。
教育改革は喫緊の課題であります。官主導の画一的な教育、消耗的な入試教育から脱却しなければなりません。グローバル・スタンダードを受け入れ、 教育の現場に自律と創意、競争が導入されるようにいたします。
学校の形を多様にし、教師の競争力向上に努めます。 そのことを通じて公教育が正常化し、私教育ブームが鎮まることでしょう。 また、生徒たちの適性と創意力が高まります。
大学の自主化は国家競争力だけでなく、韓国社会の先進化のカギであります。 教育と研究力を伸ばし、世界の大学と熾烈な競争をしなければなりません。 知識基盤社会の前線に立たされているのです。
厳しい事情の中でも勉強ができるよう、教育の機会を質的に拡大しなければなりません。教育福祉を通じ、貧困の受け継ぎをなくしていきます。
科学が社会を合理的に変え、先進化を進めます。 韓国のいくつかの科学技術は世界的レベルに到達していますが、 道のりはまだ遠いと言えます。20年、30年先を見据え、 科学技術の創意的力量を育ててまいります。 優秀な科学者を育て、科学者を尊敬し優遇する社会風土を作り上げます。
科学技術が未来へ向かう扉を開いてくれます。基礎科学の基盤技術、巨大技術の研究開発に、国が長期計画を立て支援致します。 産官学の研究開発協力体制を、 より実質的なものにするための方策を探ってまいります。
住宅は財産ではなく、生活のインフラであります。 住居生活の水準を高め、住宅価格を安定させる住居福祉政策を 積極的に展開してまいります。
国土の構造を未来志向のものに改変する計画です。海洋志向と広域化は世界的な流れとなっています。未来のライフスタイルに合わせた空間の活用法も考えなくてはなりません。どんな場合であれ、環境にやさしく、文化にやさしく、との基調を維持し、国土の健康性と品格を高めてまいります。
環境保全は、暮らしの質を改善し、 環境産業は新たな成長エンジンを作り出します。
地球の環境変化が人類を脅かしています。 気象災害が頻発し、被害の規模も大きくなっています。 我々も二酸化炭素の排出削減に、積極的に取り組まなければなりません。
韓国経済がこうした流れに適応するためには、短期的には困難に直面するでありましょう。しかし、その苦難に耐え、創意的に対応していかなければなりません。
食糧、環境、水、資源、エネルギーなどと関連した政策全般を 環境にやさしいものに変えてまいります。
我々は、長い歴史を持つ文化国家であります。最近、世界的に注目を浴びている韓流は、そのような伝統と脈がつながっています。
伝統文化の現代化と文化芸術の先進化がうまくかみ合った時、 経済的な豊かさがもたされることでしょう。
今や、文化も産業です。コンテンツ産業の競争力を高め、 文化強国の基盤を固めなければなりません。
文化のレベルが高まれば、暮らしの格調が高くなります。 文化を楽しみ、文化で融和を果たし、文化で発展を遂げることができます。 政府は、韓国文化の底力が21世紀の開かれた空間で大きく花開くことができるよう、最善をつくすかんがえであります。
尊敬する国民の皆様。
大韓民国はより広い視野、より能動的な姿勢で、 国際社会の中でグローバル外交を展開してまいります。
我々は、人種と宗教、貧富の格差を越え、世界の全ての国々、全ての人々と、 友人になります。民主主義と市場経済という人類共通の価値を尊重しながら、 地球村の平和と発展のために取り組みます。
アメリカとは、伝統的な友好関係を未来志向の同盟関係に発展、 強化させていきます。両国間で形成された歴史的信頼をもとに、 戦略的同盟関係を強固なものにいたします。
アジア諸国との連帯も極めて重要であります。 特に、日本、中国、ロシアと広く協力関係を強化し、 東アジアの平和と共同繁栄を模索してまいります。
韓国経済のエンジンを安定的に稼働させるため、 資源とエネルギーの安定確保に向けて努力いたします。 また、平和と環境のための国際協力にも取り組んでまいります。
我々の経済規模と外交力にふさわしく、 人類普遍の価値を実現する貢献外交を展開いたします。
国連平和維持軍(PKO)に積極的に参加し、 政府開発援助(ODA)を拡大いたします。
文化外交に重点を置き、国際社会との疎通を円滑に図ります。 我々の伝統文化と先端技術が調和すれば、 韓国の魅力を世界に知らせることができるでしょう。
南北統一は7千万国民の念願であります。南北関係は、これまでにも増して、より生産的なものへと発展しなければなりません。イデオロギーの基準ではなく、 実用の基準で取り組んでまいります。南北の住民が幸せに暮らし、 統一の基盤を作り上げることが我々の目標であります。
「非核・開放・3000構想」で明らかにしたように、北韓が核を放棄し、開放の道を選択すれば、南北協力に新たなページが開かれることでしょう。
国際社会と協力し、10年以内に北韓の住民所得が3千ドルに達するよう支援いたします。そうすることが同じ民族のためであり、統一を早める道であると考えます。
南北の政治指導者は、どうすれば7千万の国民が豊かに暮らせるようになるか、 どうすれば互いを尊重しながら統一を実現できるか、 ということについて意見を交わさなければなりません。
そのためなら、南北の首脳がいつでも会い、胸襟を開いて話し合うべきであり、 その機会は開かれています。
政治の根本は、国民を楽にさせ、幸せに暮らせるようにすることです。 しかし、政治が国民の期待に及んでいません。 政治が変わらないことには、先進一流国家を創ることはできません。
国の発展方向と実行案を作成し、示さなければなりません。国民の苦労を減らし、希望を与えることです。これが、実用政治の基本であります。
道のりは遠いように見えます。しかし、できることから始めましょう。 消耗的な政治慣行は、果敢に捨てましょう。国民の意思を汲み上げ、 国民の苦労を減らす生産的なことを探して実行しましょう。
与野党を問わず、対話の門を大きく開きます。
国会と協力し、司法府の考えを尊重いたします。
尊敬する国民の皆様。
日々の糧にも事欠く田舎少年が、露天商、苦学生、日雇い労働者、 サラリーマンを経て大企業の会長、国会議員、ソウル特別市長を歴任しました。 そして、大韓民国の大統領になりました。
このように、大韓民国は夢を抱ける国であります。 その夢を叶えられる国であります。
私は、大韓民国の全国民が夢を持っていただくことを願います。 そして、それを実現するために、一生懸命働くことを願います。
私は、この貴重な地に、機会が溢れるようにしたい考えです。 貧しくても希望のある国、倒れても立ち上がれる国、 汗流して努力した人はだれでも成功の機会が与えられる国、 そんな国を作り上げてまいります。
国民の心の中にある大韓民国の地図を世界に広げたいと思います。 世界の文物を幅広く取り入れ、 この地で新しい価値として創造されるように致します。
そうして、大韓民国が世界に向けて新たな価値を発信する国、 先進一流国家になれるようにいたします。
これは、先代の祈願であり、当代の希望であり、後代との約束であります。
私、李明博が舵取りをいたします。
政府の力だけでは難しいので、国民の皆様も力を貸してください。 各自が進んで実行してください。
親は子供の心身を丈夫に育ててください。 先生は生徒を一生懸命教えてください。 企業家と労働者は、手を携えて力強く前進してください。
青年は自己開発のために、さらに努力してください。 軍人と警察は、国と社会をしっかりと守ってください。 宗教家、市民運動家、マスコミ関係者は、より重い責任を背負ってください。
公務員はより誠意をもって国民に仕えてください。 大統領の私から、一生懸命働きます。
尊敬する国民の皆様。
我々の時代的課題、大韓民国の先進化のための大きな前進が始まりました 漢江の奇跡を越え、韓半島の新たな神話に向かって、 みんな一緒に進んでいこうではありませんか。私、李明博がリードします。 全国民が心を一つにして頑張れば、きっとできます。 必ずできます。
ご清聴、ありがとうございました。
2008年2月25日 大韓民国 大統領 李明博 |
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