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知的財産創造立国に向けて
 

2006/10/31

外国映画にはよくCIA(アメリカ中央情報局)や、各国の秘密情報局といった組織の職員が登場し、スパイ役などを演じたりしていますね。それくらい外国の情報機関は存在感のあるものとして国民に知られていますが、日本にはこのような情報機関はあるのですか。
早川 日本の情報機関には公安調査庁があり、国内の情報調査活動を主に行っておりますが、国外の情報収集能力は十分ではないといわれております。この他、内閣には内閣情報調査室や内閣安全保障・危機管理室などが置かれておりますが、アメリカのような高度な情報機関とは言い難いようです。
今回の北朝鮮の核実験や7月に北朝鮮が行ったミサイル発射などの例もありますし、私たち国民の安全に関わる情報収集は国がもっと積極的に行うべきではないでしょうか。
早川 私もそう思います。しかし実際には、アメリカからの情報提供に頼ってしまっているのが実情です。日本のこれからの安全保障を考えたときに、本格的な情報機関を早急に設置することが求められます。
ところで、日本はこれまで「情報」など形のない物に関しては、あまりその重要性を認識してこなかったようですね。
早川 そうですね。日本はこれまで重厚長大産業を中心に「物づくり」に重点を置いてきました。物づくりの重要性は依然として変わりませんが、これからは「情報」とか「知的財産」といった無形のものをもっと重視していく必要があります。
「知的財産」といいますとどのようなものがありますか。
早川 これまで、特許、意匠、実用新案といった「工業所有権」を中心に考えてきましたが、著作権やノウハウなどの無形の資産の価値が強く意識されるようになり、最近は、ブランドや音楽、映画等のコンテンツをはじめ、財産的価値をもつ無形の資産を広く「知的財産」と意識するようになっております。
なるほど。ドラえもんやポケモンなど、日本のアニメが世界中で爆発的な人気を博し、沢山のアニメのキャラクター商品が輸出されるようになってきたことなどを見ると、「知的財産」はこれからの産業として急成長する可能性が大きいですね。小泉前総理は、所信表明演説の中で「知的財産を戦略的に国内産業として保護活用する」とも述べていましたね。
早川 知的財産戦略を推進する上で必要なことは、知的財産の「創造と保護と活用」です。2002年に知的財産基本法が成立し、国は、積極的に「知的財産の創造と保護と活用」を進めていく方針を示しております。
知的財産の創造と活用のためには、どのような施策が必要ですか。
早川 発明や著作物等の創造は、個人の自由な発想がカギになります。そのためには、個人の創造性を重視する社会に向けた環境整備が必要となります。そのために、大学等の研究機関における知的財産創造活動を支援するとともに、その知的財産を活用するために、大学等の研究機関と企業との連携を強化する、等の施策がとられるようになりました。これまで公務員という身分上の制約のため自由闊達な研究活動ができなかったといわれてきた国立大学や国の研究機関が独立行政法人となったことにより、研究の成果を活用する途が拡がったことはその一環と言って良いと思います。
では、知的財産の保護とはどのようなことを言うのですか。
早川 かつて日本は模倣天国と言われておりました。このような時代にはおよそ「知的財産権」という考え方は成立しませんでした。今、ようやく知的財産を法律で保護しようという時代になったのです。物についての所有権侵害を窃盗や器物損壊の罪で処罰するのと同様に、知的財産権の侵害に対しても罰則を科すことができるようにするというのが知的財産権保護の第一歩です。この臨時国会で著作法の改正が行われ、著作権侵害の罪の法定刑がこれまでの懲役5年から10年へと(罰金刑も同様に改正)厳罰化されることになります。しかし、経済の国際化が著しく進展する中で、未だに国毎に知的財産権保護のルールが異なっているのが実情です。今の制度のままでは、残念ながら発明者や創作者の権利を十分に保護することは出来ません。    海外での模範品の製造や海賊版の輸入を法的に禁止するための国際的な共通ルールを構築していくことがこれからの課題と言えるでしょう。
中国などのアジア諸国では、ソフトの海賊版や模造品といった、知的財産の権利を無視した製品が流通し、大きな問題になっていますね。何か対応策はあるのですか。
早川 著作権を無視したいわゆるコピー商品が横行してきた中国では国際的な批判をうけ、政府が積極的に取締りを強化したと言われております。しかし、まだまだ対策は十分とは言いがたいようです。この状況を重く見た日米欧諸国は、WTO(世界貿易機関)に対して、中国のコピー商品に対する罰則の強化を要請しております。
ところで、世界的映画である「ローマの休日」の著作権を巡って話題となっていましたね。
早川 今年の5月に「ローマの休日」の著作権を主張している米国の会社が、復刻版の「ローマの休日」を激安で販売していた日本のソフト会社に対し、販売差し止めの仮処分を東京地裁に申請した問題ですね。
問題点はどこにあったのですか。
早川 映画の著作権の保護期間は、平成16年1月1日に改正著作権法が施行され70年に延長されましたが、改正前は50年でした。「ローマの休日」は昭和28年に公開され、平成15年12月31日で著作権が切れることになっていました。しかし、著作権法を管轄する文化庁は、昭和28年公開の映画を「著作権保護期間が終了した平成15年12月31日午後24時と改正法施行の16年1月1日午前0時は同時で、改正法が適用される」としておりました。文化庁のこのような法律解釈が正しいかどうかが裁判上問題となったのです。
裁判所の判断はどうだったのですか。
早川 東京地方裁判所は、著作権の保護期間を把握する基本的な単位は「時間」ではなく、「日」だと指摘した上で、文化庁の主張を認めませんでした。著作権の継続を主張している米国の会社はこれを不服として東京高等裁判所に控訴し、現時係争中ですので、未だに法的決着がついておりません。しかし、知的財産の保護を巡って不安定な状態が続くことは経済活動の大きな障害となりますので、早急に国際的に統一したルールを作っていく必要があります。
なるほど、難しい問題があるのですね。知的財産創造立国を目指す日本にとっては、国際的視野に立って、知的財産権の安定的取引を可能とするインフラの整備を進めることが重要ですね。
早川 そうですね。知的財産戦略を日本の経済・社会の総合戦略の一つとして位置づけていくためには、知的財産の保護について国際的に共通のルールを整備していくことが必要です。特許の分野では、いよいよアメリカが先発明主義から先願主儀に転換しました。知的財産権の分野で、いわゆる先進国と後進国との間で厳しい利害対立があるなかで、世界的な共通ルールを確立していくことは、極めて困難な課題です。しかし、少なくともわが国としては、一般の著作物の著作権の保護期間を現在の「著作者没後50年」から「著作者没後70年」に延長する等、主要先進国の標準に合わせていく努力が引続き求められていると思います。
 
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