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2006/04/27
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衆議院の法務委員会でいよいよ国際組織犯罪防止条約の締結に伴う国内法の整備のための「犯罪の国際化及び組織化並びに情報処理の高度化に対処するための刑法等の一部を改正する法律案」の審議がはじまりました。いわゆる条約刑法と言われるものであり、マスコミ等で「共謀罪法案」と呼ばれているものです。
組織的犯罪集団による、重大犯罪の共謀を処罰対象としようとしているこの共謀罪の創設については、 (1)その構成要件があいまいではないか、 (2)一般の市民団体や労働組合の活動にまで共謀罪が適用されるのではないか、 (3)冗談半分で特定の犯罪行為の実行を話題にしただけで犯罪になってしまうのではないか、 (4)この法律が成立することで戦前の治安維持法の時代に戻ってしまうのではないか、 (5)やがて日本は密告社会、監視社会になってしまうのではないか、 等の懸念が多方面から指摘されて参りました。 そこで、このような懸念を払拭するために、法務委員会の理事である私(元東京弁護士会副会長をしておりました)と、同じく弁護士で法務委員会の理事をされている公明党の漆原良夫理事とで協議を重ね、与党側の修正案を取りまとめ、今国会に提案させて頂きました。 修正案のポイントは、 (1)組織的犯罪の共謀罪の対象とする団体を組織犯罪集団に限定する。 (2)単なる共謀の段階では処罰しないこととし、新たに、処罰条件として「共謀に係る犯罪の実行に質する行為が行われた場合」という要件を付加する。 (3)組織的な犯罪の共謀罪や証人等買収罪の限定の適用に当たっては、思想及び良心の自由を侵したり、団体の正当な活動を制限するようなことがあってはならない、との留意事項を法文上明記する、 という3点です。 弁護士会や労働組合関係者の皆さんからこの修正だけで未だ不十分であり、廃案にすべしという意見も出されておりますが、組織的犯罪の共謀罪の適用を厳格化し、かつ、限定しようとするのが私どもの修正案の趣旨ですので、修正案の審議の過程で立法趣旨の明確化が図られれば、指摘されている懸念は殆ど解消されるのではないかと考えております。今後の審議状況を見守って頂き、私どもの修正案を正しくご理解頂いた上で、ご批判やご意見を賜れば幸いです。 マスコミ等では「共謀罪」と単に表現していることから一般的に「共謀」が処罰されることになるという誤解が広がっております。私は、本法案を正確に理解して頂くために、これからは「組織的犯罪共謀罪」と表現して頂くのが良いと思っております。 なお、4月25日の衆議院法務委員会で私どもの修正案について、柴山委員(弁護士)から質疑がなされましたので、主要部分をご紹介します。 |
問 | 与党としてこのような修正案を提案することとした理由は何故ですか。 |
早川 | 1 政府案に対しては、これまでの審議において、特に組織的な犯罪の共謀罪について、 (1) 一般の労働組合や民間団体の活動も対象となってしまうのではないか。(2) 犯罪の共謀をしただけで処罰することは、人の内心を処罰することと紙一重ではないか、等の御懸念が示されてきました。 そこで、これらの御懸念の点をも踏まえ、法案の共謀罪が成立する範囲を更に明確かつ限定的なものとするため、今回の修正案を提出することとしました。 2 修正の第一は、一般の労働組合等の正当な目的を有する団体の活動についてはおよそ対象にならず、犯罪組織と言えるような団体の活動として行われるものである場合に限って対象となることを条文上明らかにするため、政府案の「団体の活動として」という要件にいう「団体」を、「その共同の目的が重大な犯罪等を実行することにある団体」に限定するものです。 3 第二は、組織的な犯罪の共謀罪については、共謀をしただけの段階にとどまる限りその処罰を差し控え、更に進んで実行に向けた段階に至ったことの現れである外部的な行為が行われた場合にはじめて処罰の対象とすることにより、その処罰範囲を明確かつ限定的なものにするため、政府案に、処罰条件として、「共謀に係る犯罪の実行に資する行為が行われた場合」という要件を付加するものです。 4 また、これらの点以外にも、組織的な犯罪の共謀罪や証人等買収罪の規定の適用に当たっては、思想及び良心の自由を侵したり、弁護人としての正当な活動を制限するようなことがあってはならないことなど、運用上留意すべき事項を定めることとしています。 |
問 | 修正案の「その共同の目的がこれらの罪又は別表第一に掲げる罪を実行することにある団体」とは、どういう意味ですか。 |
早川 | 1 「団体」とは「共同の目的を有する多数人の継続的結合体であって、その目的又は意思を実現する行為の全部又は一部が組織により反復して行われるもの」をいいます(組織的犯罪処罰法第2条第1項)。そして、この「共同の目的」とは、結合体の構成員が共通して有し、その達成又は保持のために構成員が結合している目的、すなわち、構成員の継続的な結合関係の基礎になっている目的をいうと解されています。 また、「これらの罪」とは、「死刑又は無期若しくは長期4年以上の懲役若しくは禁錮の刑が定められている罪」を指し、「別表第一に掲げる罪」とは、この法案による改正後の組織的犯罪処罰法別表第一に掲げる罪を指します。 2 したがって、「その共同の目的がこれらの罪又は別表第一に掲げる罪を実行することにある団体」とは、構成員の継続的な結合関係の基礎になっている目的が、さきほど述べた罪のいずれかを実行することにある団体という意味です。 |
問 | そうすると、団体の目的が、「消費者保護の促進」など正当な活動にある場合は、その目的が一変しない限り、修正案の「その共同の目的がこれらの罪又は別表第一に掲げる罪を実行することにある団体」という要件には該当しないということですか。 |
早川 | そのとおりです。 1 ご指摘のような目的で活動している団体の場合であれば、仮に、ある特定の時期に、ある特定の犯罪に当たる活動をしたとしても、そのことだけで、直ちに、「その共同の目的が重大な犯罪等を実行することにある」と認められるわけではありません。 2 構成員の継続的な結合関係が全く一変して、正にそのために構成員が継続して結合しているという、構成員の継続的な結合関係を基礎付けている、その「根本となる目的」が重大な犯罪行為を実行することにある、と認められない限り、修正案に明記した「その共同の目的が重大な犯罪等を実行することにある団体」には当たりません。 |
問 | 今回の修正で、「その共同の目的がこれらの罪又は別表第一に掲げる罪を実行することにある団体」という要件が付されたことにより、私が前の特別国会で問題とした「OLによる万引きを目的とした集まり」の事案については、共謀罪に当たらないことがより明確になったと考えてよいのでしょうか。 |
早川 | そのとおりです。 1 ご指摘のような事例は、政府案においても、(1)そもそも「団体」の定義に当たらない、(2)そうでないにしても、「団体の活動として」の要件に当たらない、(3) (1)、(2)かが仮に当たると判断される場合であっても、「犯罪行為を実行するための組織」に当たらない、と考えられるのが相当なケースだと考えております。 2 今回の修正案で「団体」を限定したことによって、組織的犯罪の共謀罪が成立するのは、お尋ねの事例に則して言えば、組織的な窃盗団のような犯罪組織の活動として行われる場合に限られることになります。ご指摘のような事例については、組織的犯罪の共謀罪の対象とならないことがより明確になると考えます。 |
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