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2006/03/29
問 | 以前、新聞で「2007年問題」という言葉を見たことがあるのですが、一体何のことなのでしょうか。 |
早川 | 皆さんは“団塊の世代”という言葉を聞いたことがあると思います。第2次世界大戦直後の日本において、1947年から1949年にかけての第1次ベビーブームによって生まれた世代のことをいいます。その中でも1947年(昭和22年)生まれが一番多く、この人達がちょうど定年退職を迎える年が2007年になり、そのことによって起こると予想される、様々な問題のことを「2007年問題」といいます。 |
問 | そんなに大勢の方たちがその世代にはいるのですか。 |
早川 | はい、1947年から1949年生まれの方の数は国勢調査によると、688万6000人、全人口の5.4%になります。 |
問 | その団塊の世代が相次いで定年を迎えれば、企業や社会に及ぼす影響も非常に大きいですね。 |
早川 | 例えば、2007〜11年の5年間の退職者に支払う退職一時金は、約50兆円にのぼるという試算もあるそうです。これは企業の経営をかなり圧迫すると考えられます。また、これだけの労働力が急になくなってしまえば、企業は深刻な労働力不足になります。 |
問 | 政府は予想されるこれらの問題に対して何か対策を考えているのでしょうか。 |
早川 | 厚生労働省はこのほど、製造業を中心に熟練した技術や技能、ノウハウの喪失が懸念される「2007年問題」の対策として、中小企業での技能継承の取り組みに助成金を導入する方針を決めました。 |
問 | 具体的にはどのような内容なのでしょうか。 |
早川 | 厚生労働省が中小企業向けに実施している「能力開発助成金」は、従来は事業の新展開に伴って必要な従業員の能力開発などを対象としてきましたが、新たに技能継承も対象に加え、1社につき費用の2分の1、最大500万円までの助成が認められました。 |
問 | 60歳定年が中心となっている、現行の雇用制度も2006年から変わるようですね。 |
早川 | そうです。高年齢者の安定した雇用の確保等を図るために施行された「改正高年齢者雇用安定法」により、企業は2006年度以降、1. 定年年齢の引き上げ、2. 継続雇用制度の導入、3. 定年の定めの廃止、のいずれかの措置を実施することを義務付けられました。これにより定年年齢も段階的に引き上げられることになり、2013年には65歳まで雇用機会が拡大されます。もっとも、私は60歳から65歳までの方をいわゆる高齢者と定義することには反対です。60歳を過ぎても壮年の方々と同様バリバリ働いておられる方が沢山おられます。年金受給開始年齢の65歳までは、皆、現役世代だと認めて頂きたいですね。 |
問 | ところで、企業の労働力不足は、単に団塊世代のリタイヤが原因ではなく、少子化問題にも関連していると思いますが。 |
早川 | 人口減少時代に突入し、少子化問題は非常に深刻です。それに加えてNEET(ニート)の増加などもあり、これからの企業の労働力確保は大変厳しくなると考えられます。 |
問 | ニートとは、どのような人達のことをいうのでしょうか。 |
早川 | “Not In Employment,Education or Training”の略で、就業、就学、職業訓練のいずれもしていない人を指しております。日本のNEET人口は、約64万人(2004年、厚生労働省推計)いるとされており、フリーター同様、ニート人口が増えると、国の歳入確保が難しくなります。 |
問 | 社会保障の点からも問題があるようですが。 |
早川 | そうです。これまで日本の年金制度を支えてきた団塊世代を、逆に今度は若い世代が支えていかなければならないのです。年金受給者の急増によって、年金や健康保険などの保険料の負担が若い世代に重くのしかかることが予想されます。 |
問 | 深刻な問題ですね。 |
早川 | 戦後のわが国の高度経済成長を支え、今日の経済大国を築いてきた団塊の世代が、今度は社会の不安定要素になろうとしているとは、皮肉なことです。 |
問 | 激しい競争社会のなかで一生懸命に働いてこられた団塊の世代の方々は、定年後は自分のやりたいことをして、ゆとりのある、豊かな生活を送りたいと思っておられるでしょうね。 |
早川 | そうですね。私を含めて、団塊の世代は、敗戦直後の日本に生を受け、貧しい環境に置かれながらも、戦後の日本の動乱の中をたくましく生き抜いて今日の日本の繁栄を築いてきました。若い方々には、是非私共世代のこれまでの生き様を、共感をもって見て頂きたいですね。 |
問 | ところで、自由な時間と資産を持った団塊の世代が定年を迎えることで、逆に、新しい大規模な市場が生まれるから、これを経済の再生に活かすべきだという声もありますね。 |
早川 | そうですね。例えば、団塊世代の消費力をターゲットにして、島根県では、知事が東京や大阪などに暮らす県出身者約2万人にUターンを呼びかける手紙を出したり、あるいは、香川県では、「団塊世代誘客対策事業」に1千万円を計上し、旅行会社とタイアップして団塊世代をターゲットにした商品の開発を目指しているようです。自治体だけではありません。ポータルサイトのヤフーは、団塊世代を中心とした中高年向けインターネット事業を始め、4月1日から専用のサイトを開設するようです。 2007年問題は、わが国にとって深刻な問題ですが、一面において地域再生の鍵になる可能性も秘めております。会社人間を卒業して、団塊の世代がそれまでの経験を活かし、それぞれの地域でNPO活動などを始めて頂ければ、定年後も十分に充実した生活を送ることができます。大きな可能性を秘めた団塊世代のこれからの活躍に、是非暖かいご声援をお願い致します。 |
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