私たちは、100年に一度といわれる経済危機が、いよいよ深刻化しつつある状況の下、突然雇用や住居を失う方々の増大に対して国のセーフティーネット機能強化が必要であるとの問題意識を持って、これまで関係者のヒヤリング、現場への視察などを重ねて参りました。そうした現場主義及び当事者の視点に立って、以下の通り提言致します。
I 経済危機対応セーフティネット対策本部(仮称)の創設
今後ますます深刻化する雇用や生活危機に対して内閣全体で取り組む断固たる姿勢を示すために、麻生総理大臣を本部長とする経済危機対応セーフティネット対策本部(仮称)を創設し、縦割りを排除した総合的体制を作る。 今般の雇用・生活危機は、阪神淡路大震災等の大災害と同様の大胆な体制を採る必要がある。
II 住む場所の確保が最重要
現場の声は、何よりもまず住む場所の確保。住む場所がないと就職活動がままならず、生活保護申請後、開始決定までの生活が成り立たない。 そのために次の各政策が重要である。
- (緊急)緊急宿泊施設 (以下「シェルター」)については、特に必要性が高い地域において、国と地方自治体が協力し、増設すべきである。 なお、現在2分の1となっている国庫補助率の引き上げ(少なくとも3分の2まで)を行うべき。実際の補助基準が厳しくて事実上4分の1補助くらいの運用になっているとの声もある現状に鑑み、補助基準も緩和すべきである。
- (緊急)シェルターの設置は、固定費用を伴うものであり、今後経済状況が好転した際には不要になる場合もありうる。そこで、自治体の判断により、借り上げ方式によるシェルターも国庫補助の対象に含めるべきである。
- 「緊急雇用創出事業」は、党の雇用生活調査会の提言でも増額をお願いしているが「人件費が全体の8割以上」とされ、住宅に使いにくいので、条件緩和をさせるべき。
- 住宅の確保で、実際に苦労しているのは保証人の確保である。 公的保証・民間住宅入居支援制度のあり方を改善すべき(良い例として横浜市)。
- 全国的ハウスメーカー(富士ハウス)の自己破産により、前渡金を過払いさせる営業についてのセーフティネットの欠如が顕在化している。雇用喪失の場合とは異なるものの、一生の夢マイホームの重要性に鑑みれば、早急の被害者支援と再発防止のためのガイドライン策定が必要である。
III 次なるステップの明確化
- 雇用を打ち切られた側からすると、その後「どうしていいか分からない」という状況に陥る。 派遣の場合には、派遣先・派遣会社は連帯責任で、その他解雇や期間満了の場合には、当該会社が、雇用喪失時に、再就職活動、緊急小口貸付、住居の確保(雇用促進住宅・就職安定資金貸付)、生活保護の申請、外国人労働者の場合には帰国手続きや帰国補助等の「雇用喪失後の次なるステップ」について情報提供をすべきものとする。
- 就職安定資金貸付において必要となる「離職・住居喪失証明書」の、解雇時における交付を義務付けるべきものとする。また、「入居(予定)証明書」の発行について不動産協会等に理解と協力を要請すべきである。
IV 総合的相談体制の整備
- 現場で困るのは、「どこに行ったら分からないし、行ってもたらいまわしにされる」ことである。 したがって、そこにいけば何でも相談を受けることができるワンストップ型相談体制をハローワークを主たる窓口として、市町村役所を従たる窓口として構築し、さらに両者を密接に連携させることが重要である。 支援員を置き、OBも含めて有識者を臨時雇用で増員すべきである。
- この点、当議連で視察した「川崎雇用、仕事、暮らしの総合相談村(通称川崎派遣村)」では、すべての相談者がまず総合受付で相談内容を話し、各相談ブースに誘導するやり方をしていたが、参考にすべきである。 特に、保険証不所持者や精神疾患者なども多く、医療・精神相談体制の整備が重要である。
- ケースワーカーが絶対的に不足している。 NPOや専門家などを臨時的に雇う、又は業務委託するなどして緊急的にその増員を図ることが必要である。
V 立ち直りのきっかけの提供
- 職業訓練が何よりも大切である。 この点、党の雇用生活調査会において提言された「緊急人材育成・就職支援基金(仮称)」の創設と、住居・生活支援と再就職支援を職業訓練に合わせる総合的な支援は極めて重要である。
- その際、生活保護よりも職業訓練の方がいい、と誰もが思える制度設計が必要であり、特に訓練中の所得保障を生活可能なレベル、すなわち生活保護水準よりも高いものとすべきである。
- 雇用保険の適用拡大が重要である。 認められる有期契約期間や緊急性、他方で安易な受給の排除などを総合的に勘案し、「3ヶ月」以上の雇用見込みに適用拡大すべきである。
- 職業訓練や再就職に地域の移動が伴う場合には、当該移動先地域の情報提供も重要である。
VI 予防
- 貧困率の全国地域別統計を、早急に整備・精緻化し、政府としての、その削減目標も含め抜本的・総合的対策を早期に打ち出せるようにすべきである。
- 雇用調整助成金の拡充方針は望ましいが、特に残業を行っていると休業補償が出にくくなる要件は、業種の特殊性を考慮して柔軟化すべきである。
- 企業側に、有期雇用・派遣契約の期間内解除は原則認められないことを徹底すべきである。有期雇用や派遣契約の解除が認められる場合も、一ヶ月の給与や住居撤退の猶予を与えるべきである。
- 解雇や雇い止めなどの際に、理由を「自己都合」とする傾向があるが、強要した場合には罰則もあるので、企業側に対して禁止を徹底すべきである。
- 労働基準監督官の職員の業務が過重になっているので、早急に増員が必要である。
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