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政治資金規正法の改正について −その問題点を解明する−

2007/09/21

最近、早川さんは政治資金規正法の問題に取り組んでおられるようですね。 政治資金規正法とはどういう法律か教えていただけますか?
早川 はい。自民党の党改革実行本部のコンプライアンス小委員会の委員として、政治資金規正法の問題に取り組んでおります。 政治資金規正法は、政治団体や公職の候補者の政治資金の授受についての規制や、収支の公開のルールを明示して、政治活動の公明と公正を保つことを目的とした法律です。
なるほど。政治資金規正法の「政治団体」をもう少し説明してください。
早川 まず、政治団体は、大まかに3つに分類されます。1 政党、2 政治資金団体、 3 その他の政治団体です。
1 の「政党」は、私が所属している自由民主党などの政党のことを指します。
2 の「政治資金団体」とは、政党のために資金上の援助をする目的を有する団体で、政党が1団体に限り指定したもの、を言います。
3 の「その他の政治団体」は、「政党、政治資金団体及び資金管理団体以外の政治団体」を言いますので、政治家個人の後援会や、政党には該当しない様々な政治結社で、外部から政治資金を受けることを目的とする団体、一定の政治目標を掲げてこれに賛同する政治家を支援するための様々な団体の政治連盟などがこれに当てはまります。
なるほど。少し分かりました。 ところで、今、政治資金規正法の改正が求められてますね。よくニュースでは「1円以上から領収書を添付すればいいじゃないですか!」という報道がなされています。まず、現在の仕組みについて教えてください。
早川 現在は、政治資金について次のような事項が選挙管理委員会に報告すべき事項として決められています。
1 年間5万円を超える寄付について、寄付者の氏名を公開すること。
2 一つの政治資金パーティごとに20万円を超えるパーティ券購入者の氏名を公開すること。
3 政治活動費のうち、一件当たり5万円以上の支出について領収書の写しを添付すること。
4 100万円を超える動産や有価証券、土地建物の地上権や賃借権等の資産について、その内容を公開すること。
このうち、どれが問題になっているのですか?
早川 3番です。通常国会では、「その他の政治団体」のうちの政治家個人の資金管理団体について事務所費の内、人件費を除く5万円以上の支出について領収書の写しを添付すべきことになりました。しかし、政治家個人の資金管理団体だけでは足りない、全ての政治団体も対象とすべきである。1円以上全ての支出について領収書の写しを添付させるべきである、という議論が出てきております。
そうですね。私もそう思いますが、何か問題になるのでしょうか。
早川 国民の皆様からすれば全ての政治団体が収支を公開すればいいじゃないかという考えになりやすいと思います。しかし、実はこのことについては大変な問題が関わっており、実務上もなかなか単純には実現できないことだと思っております。 私は、まずどこが問題なのか、実務上どうしたら良いのか、ということについて丁寧に議論し、政治活動の自由を保障しながら、他方においてその透明性を高める工夫をしていかなければならないと思っております。
でも、5万円からというのを1円からに変えるだけじゃないんですか?私は簡単なことだと思うんですが。
早川 まず、政治活動について収支報告書の内容を誰が、どうやってチェックするのか、という問題があります。  7万以上の政治団体が毎年全ての領収書の写しを選挙管理委員会に提出するということになりますと、膨大な量になります。当然、収支報告書の提出先の総務省や都道府県の選挙管理委員会の職員を増やす必要が出てきます。書類の保管をどうするか、情報公開請求がなされた場合の事務処理体制はどうするかという問題もでてきます。 公務員の人件費は全て国民の税金によって賄われております。政治団体の収支の透明性を確保するために、どの程度国民の税金を使うべきか、そのコストとメリット・デメリットを慎重に検討して、結論を出す必要があります。
それ以外どんな問題がありますか。
早川 私は、全ての政治団体の政治活動の詳細を公開させるということは、結局、政治活動の自由を奪い、日本が監視社会になってしまうということだと思っております。どの団体がいつ、どこで、どんな活動をしているか、そのためにどこで、どんな目的のためにいくら使っているかという情報は、まさに政治的な結社の政治活動の秘密中の秘密に属することで、政治結社の自由を侵害すると考えております。    私は、法律家としてそんな乱暴な結論だけは出してはならないと思っており、あらゆる政治団体をターゲットにすることだけは、どうしても阻止しておかなければならないと思っております。
もし一円以上全ての支出について領収書の写しを添付すべきであるというふうに政治資金規正法を改正すると、その違反にはどんなペナルティが課されるのですか。
早川 今のままの仕組みを適用すると、5年以下の禁錮又は100万以下の罰金(政治資金規正法第25条1項1号、第12条)が課されることになります。
本当ですか。ちょっとそれはひどいんじゃないかな。
早川 そうでしょう。私は今の政治資金規正法の罰則は重すぎるし、現実にはなかなか適用し難いと思っております。
そうすると、政治資金規正法に違反しても実際には処罰されないことが多いということですか。
早川 そういうことになりますね。検察官は、起訴便宜主義といって違反行為が悪質でないとか、反省の情が顕著だという理由で形式的には犯罪が成立するが起訴まではしない、いわゆる起訴を猶予する処分ができることになっております。
ということは、検察官の判断ひとつで起訴されたり、起訴されなかったりになるということなんですか。
早川 まあ、そう言っても良いでしょうね。
強制的に捜査はしたが、起訴できなかったというのは、無罪だったということにならないんですか。私はちょっとおかしいと思いますけど。  起訴できないのに強制的に捜査を進めたというのは捜査する側に落ち度があったということにはならないんですかね。
早川 一応形式的には犯罪が成立するということになると、捜査自体は適法だったということになりますね。
そうですか。たとえば形式的には政治資金規正法に違反しているから犯罪だといって強制捜査をして、関係者を取り調べた結果、たいした違反じゃないから起訴をしなくても構わない、ということになりませんか。
早川 そうそう。そういう事態も予想しておかなければいけませんね。
強制的に家宅捜索をしたり、逮捕して取調べをしたが、結局たいした違反じゃないということで起訴しないという結論になった場合に、家宅捜索や逮捕した警察官は、責任を負わなくてもいいんですか。
早川 先ほど説明したとおりで、たいした違反ではなくとも、形式的には政治資金規正法に違反する犯罪行為の捜査ということになりますので、この場合の家宅捜索や逮捕は違法ではないということになります。
うーん。警察官はある行為が犯罪にあたるかどうか良く分からないけど、どうも犯罪にあたるらしいと思えば、当然捜査を始めることができますよね。現場の警察官としては、領収書の写しの添付がされていないこと自体がどうも犯罪にあたるらしいと思えば、政治団体の関係者の取調べをしても良いということになると、警察は、政治団体にとってものすごく怖い存在になってしまいますね。
早川 本当に犯罪に該当するのであれば、治安の確保という観点から警察がそれなりの役割を果たすのは当然です。しかし、政治団体の活動にこんな形で警察が介入できるようになってしまうということになると、私は戦前のような、特高警察の復活への道を開きかねないと心配しております。    もっとも、現在の民主警察が一足跳びに戦前のような警察になるということなどはありえないと確信しておりますが。
警察官は違反の疑いがあれば捜査しても良い、捜査の結果、たいした違反じゃないことが分かったら起訴しなくても良い、という仕組みだとすると、警察官や検察官のサジ加減一つで政治団体の取締りができるということになりますよね。
早川 今の制度では、国策捜査とか、政治的な思惑をもった見せしめ的な捜査が行われる危険性を完全には否定できません。
そうですか。そんなことがあるとはまったく想像しておりませんでした。やはり余り急いで結論を出さないほうがよさそうですね。
早川 制度の改正をする時には、1 既存の制度が作られた背景や、その運用の実態、さらに 2 どんなことが、いつ頃から制度の欠陥として浮かび上がってきたのか、 3 その欠陥を是正するためにはどういう工夫が必要か、 4 諸外国ではどんな制度になっているか、 5 新しい規制を導入する場合に、その実効性を担保するためにはどんな仕組みを考えたらよいのか、 6 そのコストはどのくらいが適当か、 7 新しく導入する規制とその違反に対するペナルティはバランスが取れているか、等々総合的な見地からの検討が必要です。
国民の期待に応えることができるような新しい制度を作るために、是非法律家である早川さんにはこれからも国会で頑張って欲しいですね。
早川 ありがとうございます。法律の専門家として、私に与えられた役割をこれからも誠実に果たしていきたいと思っております。
 
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