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「組織的犯罪の共謀罪」について 実務者協議の成果を反映した修正案の実現に向けて!!

2006/06/23

【はじめに】
 
第164回通常国会が閉幕しました。この通常国会で国民の皆様から大きな関心が寄せられました「組織的犯罪の共謀罪」の創設を内容とする組織的犯罪処罰法の改正法案(条約刑法)は継続審議となりました。
 政府提出の組織犯罪処罰法等の改正法案(条約刑法)原案については、構成要件が不明確でわかりづらく、拡大解釈されるおそれがあるのではないかといった懸念が示されておりましたところ、本年4月21日与党から修正案を提出させて頂き、その後に至って民主党からも修正案が提出されたところです。小泉改革にとって最後の国会となる通常国会でしたので、何とかして共同修正をして、法の成立を実現したいと思っておりましたが、成立に至らなかったことは誠に残念だと思っております。しかし、既にご報告したとおり、最終日である6月16日の法務委員会で与党側の修正試案(与党側にとって最終改正案となる)の提示並びに会議録への参照掲載が認められ、修正協議の成果を次の国会に引き継ぐことが出来たことは幸いだと思っております。
 
【民主党との修正協議の経過】
 
ところで、民主党から修正案が提出された後、どのような審議・協議が行われてきたのか、国民の皆様にはよく分からない状況だったと思います。後日の審議の参考にして頂くため、修正案提出後どのようなやりとりがあったのか、ご報告いたします。
  1. 4月28日、民主党から修正案が提出された後、民主党の高山理事と私との間で共同修正を実現すべく、様々な機会を通じて毎日のように協議を続けました。
  2. しかし、共同修正の成案を得られず、5月19日法務委員会の採決を迎える状況となりました。
  3. 委員会での採決を目前にした同日正午頃河野衆議院議長から与野党の国対委員長に対し、「国際組織犯罪防止条約の締結のための国内法の整備を早急に進めるために、円満な委員会審議に心がけて頂きたい。ついては、引続き与野党間で更に共同修正のための協議を続けられたい。」との斡旋がありました。
  4. 衆議院議長の斡旋に基づいて、5月19日以降私と高山理事の間で、引き続き共同修正案策定のための協議を続けました。しかし、民主党からは具体的な提案が出されず、その後の協議も不調に終わってしまいました。
  5. そのような状況の中で、5月26日に至り、石原法務委員長から与野党理事に対し、与党3名、民主党3名からなる「共同修正のための専門家による実務者協議」を開催し、そこで共同修正の協議を進めるよう提案されました。
  6. これを受けて、与党側から私を含め弁護士資格を持つ委員3名、野党側から高山理事、及び2名の弁護士資格をもつ委員による実務者協議を行いました。残念ながら、その後行われた実務者協議においても、民主党側から積極的な提案がなく、共同修正案の成案は得られませんでした。
  7. このような状況を受けて、6月1日の理事会において、与党側理事から民主党に対し、民主党の当初の修正案を全面的に受け容れるので、委員会での採決に応じられたい旨の提案をするに至りました。(なお、理事会の直前に開催された実務者協議の場において、石原法務委員長から、実務者協議の方向性についての示唆が書面でなされました。)
  8. 実務者協議の当事者である私としては、実務者協議の内容が全く反映されておらず、とうてい納得できるようなものではありませんでしたが、全く何らの法整備ができないよりは、一歩でも前進すれば良いとの高度の政治的判断に基づく決断であろうと考え、しぶしぶこれに同意いたしました。
  9. ところが、政治の世界では誠に不可思議、想定外の事態が起きるものです。その後の展開はまことに意外なものでした。当然自分の提案した修正案ですので、民主党も自民党のこの提案を受け入れると思われたのですが、案に相違して、民主党は、小沢代表から「こんなものを成立させても一文の得にもならない」と言われたために方針を変えたのか、麻生外務大臣が閣議後に行われた記者ブリーフ(いわゆるぶらさがりの発言)で「民主党修正案では、国際的組織犯罪防止条約の締結に支障がある」と記者に答えたことを理由にして、与党提案を拒絶すると回答してきたのです。
  10. このような経緯で、民主党の当初修正案を丸呑みして与党が採決するという事態は回避されました。民主党の当初の修正案では、「実務者協議」の成果が全く反映されておらず、反って、構成要件があいまいで拡大解釈されやすい表現もそのまま残っており、何よりも条約の制約を逸脱していることから、麻生外務大臣の発言を待つまでもなく条約の締結に支障が生ずることが明らかでした。民主党の当初修正案での採決を見送ることになったことは、幸いだったと考えております。(私としては、委員会での審議の内容やその後行われた実務者協議の成果を踏まえ、あくまで条約の締結に支障を来さない限度で、最善の工夫を施した修正案を策定し、これを実現すべきであると考えておりました。)
  11. ところで、6月1日の理事会の直前の第三回実務者協議に際して、実務者協議の方向性について、石原法務委員長から文書により示唆があった内容は次のとおりです。(前回レポートのとおり)
    1. 逮捕の要件について、共謀が行われたことのほか、必要な準備その他の行為が行われたことを要件とすること。
    2. 「共謀」の行為について、「具体的な謀議を行いこれを共謀した者」という表現に改め、その意義を明確にすること。
    3. 共謀の後、共謀の目的とする対象犯罪が成立するに至ったときは、共謀罪は対象犯罪に吸収されることを法律上明確にすること。
    4. 実行に着手する前の自首による刑の減免規定を削除した上、「情状により、その刑を免除することができる」旨の規定を設けること。
    5. 共謀の対象犯罪は、長期4年以上の罪を前提として、過失犯その他性質上共謀の対象犯罪とならない罪を別表に列記して除外すること。
    6. 以下の規定を設けること(附則)
      • 共謀罪の適用に当たっては、国際的な組織犯罪を防止し、これと戦うことを目的とする条約の目的を逸脱することがないように留意し、いやしくも拡張して解釈してはならない旨の規定
      • 特に長期5年以下の罪の共謀については、当分の間、特に新調に適用し、政府は、その間、その施行状況について検討を加え、必要があるときは、法整備その他所要の措置を講ずるものとする旨の規定
  12. 委員長示唆に基づいて、共同修正のための試案を策定し、6月14日に民主党に提示しましたが、民主党は、今回も共同修正案として提出することを拒否しました。
  13. 私ども与党側は、再々修正案を提出しても、通常国会で成立する目途も立たないことから、6月16日開催の委員会において担当者である私から実務者協議の経過報告をすること、および実務者協議の成果として与党側修正試案を委員会の会議録に参照掲載という形で残すこと、を求めました。
  14. これに対し、民主党側からは、「与党から再々修正案として提出するのが筋である。再々修正案として提出するのであれば、実力でもってこれを妨害することまではしないが、それ以外であれば委員長の解任決議や、不信任決議を出すことも検討している。」と述べ、与党の提案をあくまで拒否する姿勢を示しておりました。
  15. 部外者から見れば何故そんなことに拘わるのか、と思われるようなことがらですが、民主党側の理事は、与党側の提案には一切乗るなと上層部から指示されていたため、あれこれ理屈を並べ、法案の廃案を狙っていた、ということでしょうか。委員会開催のために、ただただ黙って一日中待機して頂いた委員会の委員及び職員の皆様には大変申し訳なく思っております。
  16. 結局、私の意見陳述はしないで、法務委員会会議録に、実務者協議を踏まえて共同修正のための修正案として策定した与党側修正試案を参照掲載することで決着しました。
 
【今後の展開】
 
以上のとおりの経過で、結果的に政府原案のみが次の国会に継続審議となりました。私共の提出した当初修正案は白紙になってしまいましたが、与党側修正試案が最終的に法務委員会の会議録に参照掲載という形で残ることになりましたので、どうにか実務者協議の成果を残すことが出来ました。次の国会の審議は、これを前提として行われることになると思われます。
政治的な思惑や駆け引きに振り回されてしまい、中途半端に終わってしまったことは返す返すも残念ですが、法務委員会の理事として、この法案を巡って、通常では経験できないような大きな経験をさせて頂いたことは幸いでした。当選2期目の私にこのような重要な役割を与えて頂いた先輩理事や自民党執行部の配慮に心から感謝申し上げます。
 
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