自民党 衆議院議員 早川忠孝 ウェブサイト

お問い合わせ・ご質問はこちらまで

ここからメニューです。

→戻る

ここからコンテンツです。

組織的犯罪の共謀罪について

2006/06/21

【はじめに】
 
「組織的な犯罪の共謀罪」の新設を含む「犯罪の国際化及び組織化並びに情報処理の高度化に対処するための刑法等の一部を改正する法律案」については、法務委員会で、長時間にわたって審議が行われてきましたが、残念ながら通常国会の閉会によって継続審議となりました。国際組織犯罪防止条約締結のための国内法の整備が今回も実現できなかったことはその中で、私どもから4月21日に与党修正案を提出し、4月28日には民主党修正案が提出されました。
その後、民主党との共同提案を目指して修正協議を行い、結局、5月19日に与党再修正案を提出することとなりました。その時点で既に十分な審議が行われていましたが、その後も引き続き、精力的に共同修正のための協議を重ねてまいりました。残念ながら、成案を得るには至りませんでしたが、これまで積み重ねてきた協議の成果を無にしてはならないという認識は民主党側にも共有していただけているのではないかと思います。
今国会は既に閉会となりましたが、我々与党としては、条約を締結するとともに、近時の犯罪情勢に適切に対応できるようにするため、一日も早く、この法案を成立させなければならないと考えております。
 
本年6月2日の法務委員会において、与党側修正案提出者を代表して、私から民主党との修正協議の経過について説明いたしましたが、その後の経過や、与党側として考えている更なる修正案(6月14日修正試案として理事会に報告)の内容についてご説明致します。なお、具体的な交渉経過の詳細については、改めてご報告させて頂きます。
 
【協議の経過】
 
民主党との協議を継続する過程で、委員長から、それまでの協議を踏まえ、「組織的な犯罪の共謀罪に関する修正について」という書面により、6項目にわたる修正項目の御示唆をいただきました。
改めてその要点だけ御紹介しますと、
 1点目は、「必要な準備その他の行為」を逮捕の要件とすること
 2点目は、「共謀」の意義を明確化すること
 3点目は、共謀罪は対象犯罪に吸収されることを明記すること
 4点目は、自首減免規定を削除し、情状により刑を免除できるようにすること
 5点目は、性質上対象とならない犯罪を共謀の対象犯罪から除外すること
 6点目のその1は、共謀罪の適用に当たって、国際組織犯罪の防止という条約の目的に留意するものとすること
 6点目のその2は、長期五年以下の犯罪の共謀については特に慎重に適用し、必要があれば法整備等の措置を講ずるものとすること、というものでした。

そこで、与党側においては、委員長から御示唆のあった修正項目について、条文の試案を作成した上で、これを民主党側にお示しし、共同修正のための条文案とすることについて御検討をお願いしました。
結局、残念ながら民主党側の御賛同をいただけませんでしたので、6月14日の理事会においては、与党側の試案として、協議の経過とともに御報告させていただきました。
 
【 与党試案の内容 】
 
与党側の条文試案は、既に5月19日の法務委員会に提出して御審議いただいた与党再修正案を前提とした上で、委員長の御示唆及び協議の成果を踏まえ、その内容を一層明確化するものです。
 
 第1は、「組織的な犯罪の共謀罪」の対象となる犯罪については、条約の義務を踏まえて長期4年以上の犯罪とした上で、過失犯など、その性質上共謀の対象犯罪とならない罪を別表に列記して除外することです。
すなわち、これまで600を超えると言われていた対象犯罪には、陰謀罪・共謀罪、過失犯、結果的加重犯なども含まれていましたが、例えば、共謀の共謀は本犯の共謀にほかならないと考えられ、また、故意がない過失犯を共謀することは考えられないなど、その犯罪自体を共謀することは理論上あり得ないと考えられるものについて、別表に掲げて対象犯罪から除外するものであり、この結果、28の犯罪の減少となります。
なお、既に提出した与党再修正案においては、対象となり得る団体の共同の目的となる犯罪を「長期5年以上の犯罪」に限定することによって、13の犯罪を対象から除外しておりますので、合計すると41の犯罪の減少となります。
第2は、「共謀」の意義を更に明確にするため、「具体的な謀議を行いこれを共謀した者」という表現に改めることです。  すなわち、これまでの法務委員会での答弁において、「共謀」と言えるためには、特定の犯罪を実行することについて具体的かつ現実的な合意が行われなければならないと申し上げてきましたが、この点を条文上も明確にするものです。これによって、「具体的な謀議」がなされないと「共謀」に当たりませんし、当然のことながら、目配せだけでは、条文上も「共謀」に当たらないことが一層明確になります。
 
第3は、「組織的な犯罪の共謀罪」の処罰条件として「実行に必要な準備その他の行為」を付加し、更に、この行為が行われたという嫌疑がない限り、逮捕・勾留をすることができないものとすることです。
すなわち、共謀が行われた時点で逮捕することができるか否かについては、これまでの法務委員会での答弁において、「実行に必要な準備その他の行為」が行われる前に逮捕することは実際上想定されないと御説明してきたところですが、「実行に必要な準備その他の行為」が行われたという嫌疑を逮捕・勾留の法的要件とするものです。
 
第4は、共謀をした者が実行に着手する前に自首した場合に刑を必要的に減軽又は免除する規定を削除した上、「情状により、その刑を免除することができる」との規定を設けることです。
自首減免規定については、これが密告社会につながるとの御懸念が示されました。他方で、共謀をした後に実行を中止した場合に、自首しない限り処罰の対象となってしまうのは不当ではないかとの御意見が示されました。そこで、この修正によって、密告社会につながるとの御懸念を払拭するとともに、共謀後に自ら実行を中止したような場合も含め、情状により刑を免除することができることとなります。
 
 第5は、「組織的な犯罪の共謀罪」を犯した者が、共謀の対象となった犯罪を実行した場合には、実行した犯罪で処罰され、「組織的な犯罪の共謀罪」では処罰されないことを条文上も明確にすることです。
すなわち、この点については、法務委員会での答弁において、これまでの判例や解釈からして、「組織的な犯罪の共謀罪」についても対象犯罪に吸収されると解されると御説明してきましたが、これを条文上も明らかにするものです。
 
第6は、「組織的な犯罪の共謀罪」の規定は、国際的な組織犯罪を防止すること等を目的とする国際組織犯罪防止条約を実施するために定めるものであることにかんがみ、この条約の目的を逸脱することのないように留意し、いやしくも拡張して解釈するようなことがあってはならないという、運用において留意すべき事項を明文で規定することです。
 
第7は、当分の間、長期5年以下の懲役・禁錮の刑が定められている犯罪については、「組織的な犯罪の共謀罪」の規定は特に慎重に適用されなければならず、その施行状況について検討を行い、必要に応じて法整備等の措置を講ずるものとすることです。
 
この第6と第7については、民主党から、「組織的な犯罪の共謀罪」の対象犯罪について、長期5年を超え、かつ、国際的な性質を有するものに限定する旨の修正案が提出されたところですが、我々与党側としましては、条約との整合性を図りつつ、民主党の御意見を最大限尊重して、このような規定を設けることとしたものです。
 
【結び】
 
 この法案については、法務委員会での審議は十分熟していると考えております。通常国会が閉会となる直前の6月16日の法務委員会において、会議録に参照掲載することとして頂いた与党側修正試案は、これまでの委員会の審議やその際の実務者協議の内容を十二分に反映したベストのものと確信しており、必ずや国民の皆様方の御理解を得られるであろうと考えております。
 
 
△ページTOPへ