自民党 衆議院議員 早川忠孝 ウェブサイト

お問い合わせ・ご質問はこちらまで

ここからメニューです。

→戻る

ここからコンテンツです。

「JRの脱線事故を再び繰り返さないために」

2005/05/17-00:00

去る4月25日、JR西日本の福知山線で快速電車が脱線しました。死者107人、重軽傷者460人にのぼる大惨事でした。
早川 本当に心が痛みます。
朝、「行ってきます」といって元気に家を出た家族が、一瞬にして命を奪われ、二度と帰ってこないというのは、何たる不条理でしょうか。ご遺族のお気持ちは察するに余りあります。いまだ病院で治療を受けておられる負傷者、また幸いにして生還された方も、心的外傷ストレスなど、精神的に多大なるダメージを負われたことと思います。言葉にならない気持ちでいっぱいです。
テレビや新聞の報道を目にすると、やりきれない思いです。
早川 被害に遭われた方は、10代後半から20代の若年層が目立ちました。ほとんどが通学途中の多くの学生が犠牲になりました。平日のために子供連れや家族連れは少なく、通勤や通学、買い物などで郊外から都心部に向かう途中に起こった「都市型」の事故だったようです。
国としては今後、どういう対策を講じていくのですか?
早川 事故を受け、5月6日、国土交通省は全国のJR各社と大手私鉄に対し、適正なダイヤが組まれているかどうかなどを今月末までに緊急点検するよう指示しました。現行のダイヤがカーブの制限速度や車両性能からみて余裕を持っているかどうかや、自動列車停止装置(ATS)や車両などの検査と不具合への対策状況について、報告を求めています。
事故を起こした、当のJR西日本の再発防止策はどうなっているのですか?
早川 JR西日本は、(1)安全を優先する企業風土の構築、(2)運転保安システムの整備、(3)列車ダイヤの見直し、(3)安全を担う人材育成、(4)教育指導のあり方、(5)情報伝達のあり方、という5項目の再発防止策を盛り込んだ「安全性向上計画」を今月末までにまとめる予定です。しかし、国土交通省は107名もの死者を出した事故を重く見て、計画の内容を確認するために、鉄道事業法に基づく立ち入り検査が必要と判断し、6月にも行なう予定です。公共交通機関として必要な安全を確保できていないと判断した場合、事業改善命令を出し、ダイヤの変更を求めることもありうるとしています。
事故を巡っては、さまざまな問題が明るみになりました。
事故の再発防止はもちろん、企業の体質そのものにも改善が求められるべきではないでしょうか?
早川 事故後も、ボウリング大会やゴルフコンペ、旅行、送別会などの催しに計14部署、延べ185人の社員が参加していたことが明るみになりました。事故翌日、社長名で各支社に節度ある行動を求める通達を出したそうですが、その後も催しは続いており、犠牲者の遺族や負傷者の心情を勘案すれば中止するべきだったと言われても仕方ありませんね。5月13日、衆議院の国土交通委員会は脱線事故に関する集中審議を行い、参考人として出席したJR西日本の垣内剛社長から、新型のATS(自動列車停止装置)の整備を急ぐなど再発防止策に加えて、企業風土の改革や社員教育の見直しを行う旨の回答を得ています。
電車が転覆し、激突したマンションの住民もお気の毒です。
早川 長期ローンを組んだり、退職金をつぎ込んで購入したマンションに住めなくなってしまった方もいます。こうした方たちへの補償の問題もありますし、また、事故が起こった直後に救助にあたるなどして大変なご尽力を頂いた近隣住民の方々もいわば被害者の一人であります。尾辻秀久厚生労働大臣は「救助に当たられた方々、あるいは近くにおられて事故を目撃された方々、そうした多くの方々に対しても心のケアはとりくむべきだ」と述べました。兵庫県など地元自治体がすでに相談窓口を設けるなどしています。これを国としても全面的に支援し、対象者もさらに拡大する必要があります。
それにしても、どうしてこんな惨劇が起こってしまったのでしょうか?
早川 これまでの事故調査委員会の調査では、事故車両や軌道には特段の異常は見つかっていません。一方、車両搭載の「モニター制御装置」の解析などから、運転士は現場手前の直線で時速120kmもの速度を出し、常用ブレーキで108km前後まで減速しましたが、カーブ直前でさらに非常ブレーキを作動させるという異常運転が明らかになっています。司法解剖の結果、運転士には運転に支障が出るような病気などは見つかっていないため、事故調査委員会では、人為的ミスが事故を引き起こしたと断定しました。
どうしてそんな重大なミスを犯してしまったのでしょうか?
早川 事故調査委員会が注目しているのは、(1)指令所から2度にわたって無線連絡を受けたのに応答しなかった、(2)直前の伊丹駅で起こしたオーバーランを過少申告するよう車掌に持ちかけた、などの運転士の特異な行動です。昨年6月にもオーバーランで訓告処分を受けた運転士が事故当時、パニック状態に陥っていたと思われます。さらに、ミスを犯した運転士に懲罰的な「日勤」教育を行う過酷な労務管理や、過密ダイヤで運転士に無理な「回復運転」を強いるなどのJR西日本の管理体制にも問題があったとの見方が強まっています。
そう考えていくと、こうした事故の再発防止は一筋縄にはいきそうにありませんね。
早川 “ヒューマンエラー”(人間の誤り)という観点から、さまざまな事故防止に取り組む試みが各所でなされています。人間は誰でもミスを犯すものであり、その人だけに責任を押し付けても、事故防止にはつながらない、という発想です。アメリカでは、第二次世界大戦まで、軍用飛行機事故の原因は操縦する個人にあるとされていたそうです。しかし、後に人間工学の応用や、ヒューマンエラーを重視によって事故は少なくなりました。軍用機の成功例をもとに、民間航空会社もさまざまなプログラムを開発し、1970年代にアメリカ国内のジェット便で200万分の1と言われた死亡リスクは、1990年代には800万分の1にまで下がったそうです。
誰もが安心して乗ることができる身近な交通機関、安全な電車の復活を一刻も早く期待したいですね。
早川 まったくその通りですね。同時に、鉄道の信頼回復に懸命に努めている乗務員や駅員の皆さんには頑張って頂きたいと思います。脱線事故後、JR西日本の乗務員を狙った悪質な嫌がらせ行為が相次いでいるそうです。暴行や傷害、職務妨害を始め、罵声を浴びせかけるなどの心無い行為が2週間で120件に上ったといいます。安全な公共輸送機関は、我々乗客の協力無くしては成立しません。
みんなが一致協力して、安心・安全な社会を築いていかなければなりませんね。